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2025年5月金谷地区医療学習会

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 2025年5月17日(土)に島田市立金谷公民館「みんくる」で医療学習会が開催され、当医療センター呼吸器内科医長の伊藤医師、救急外来の杉浦主任看護師が講演を行いました。

 第1部では、伊藤医師が結核についての講演を行いました。
まず、結核が原因で亡くなった宮沢賢治の「アメニモマケズ」の紹介から始まりました。
結核(Tuberculosis)とは、マイコバクテリウム属の結核菌によって引き起こされる感染症のことです。結核菌は抗酸菌に属しています。結核という言葉は、7世紀の中国で、頚部リンパ節炎で首のリンパ節が腫れた状態が果物の種(核)が連なったような見た目だとして表現したという一説があります。結核菌は、蛍光染色を行うと緑~黄色に染まり、チール・ネルゼン法を行うと赤く染まります。このことで結核菌が視覚的に見えるようになります。

次に、結核の現状についての説明がありました。結核は世界総人口の約4分の1が罹患している最大の感染症です。毎年1,000万人ほど発病して、160万人ほどが亡くなっているというデータがあります。現在の日本は低蔓延国です。10万人あたり10人を切っていたら低蔓延国、100人以上で高蔓延国ですが、2021年に日本で診断された患者は11,519人で、10万人あたり9.2人でした。現在は低蔓延国ですが、日本も2019年までは10万人あたり12.3人で中蔓延国だったため、実は身近な病気と言えます。また、他の先進国と比較しても結核患者の割合は多めとなっています。
日本の結核患者は高齢者が多く、新たに結核と診断された患者の6割以上が70歳以上です。高齢者は糖尿病や高血圧など、他の病気を持っていることがあるので、結核を併発すると重症化しやすいです。
近年はフィリピンやベトナムから出稼ぎで来る若者が罹患していることが多く、新規に受け入れた結核患者では、海外の人が約1割になっています。令和3~5年の結核患者の届出総数(島田市、藤枝市、焼津市、牧之原市、吉田町、川根本町)は「令和3年:51人(外国籍12人)」、「令和4年:33人(外国籍6人)」、「令和5年:58人(外国籍12人)」で、島田市では「令和3年:8人」、「令和4年:2人」、「令和5年:8人」となっています。2023年8月までの5年間のうちに当院で治療した人は49人です。そのうち20~50歳は8人(全員外国籍)で、80~90歳が一番多くなっています。結核自体が原因で死亡することはほとんどなく、結核をきっかけとした誤嚥性肺炎や、老衰で亡くなることが多いです。

結核菌は、咳や痰などで人から人にうつるため、誰しもが持っている可能性があります。菌が体に入ってから、免疫で排除されずに定着した場合は、結核菌が分裂して増えて、体の中に反応が起きます。この状態を感染と言います。そのあとどんどん菌が増えて、熱・咳・倦怠感など症状が出たときに、感染症となります。感染経路としては、結核患者の咳・くしゃみが飛んで水分が蒸発すると、結核菌が飛び、近くの人が吸い込むことで肺胞まで届いて感染する流れとなります。結核患者が咳をすることで排菌をして、それを周りの100人が吸い込んだ場合、100人中約30人が感染をします。そこからすぐ発症するのは約1.5人で、二次結核として長年経ってから発症するのは約1.5人となります。菌をもらったからといって、すぐ感染するわけではなく、また感染したとしてもすぐに発症するとは限らないことがわかります。
結核の種類としては、肺結核となることがほとんどで、まれに結核性胸膜炎、ごくまれに結核性リンパ節炎を発症することがあります。肺外結核として、髄膜、腎臓や骨、皮膚に起こることもありますが、症例としてはほとんどありません。

検査の方法としては、痰を使って検査を行うことが多いです。痰を顕微鏡で見た結果、抗酸菌があればPCR検査をし、その結果が陽性ならば結核と診断します。ほかにも胃液培養検査、カメラ(内視鏡)、血液検査があります。
喀痰検査:痰を染色し、顕微鏡で見る。短時間で菌の有無や菌の量を見ることができるが、ある程度菌がいないと成立せず、また結核菌も抗酸菌も区別できない。菌の生死がわからない。
培養検査:痰を特殊な培地において、2~3週間待つ。菌が増えてきたら核酸の検査を行う。
血液検査(クォンティフェロン):過去に結核に罹患したことがあるかがわかる。結核に罹患した直後ではわからない。

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    抗酸菌培養検査

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    チール・ネルゼン染色像

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    結核菌拡大像

(詳しくはこちらをご覧ください。)

治療方法としては、1943年に最初の薬(ストレプトマイシン)ができましたが、それまでは罹患すると死亡してしまう病気の一つでした。当時は日光浴や綺麗な空気が有効だと考えられており、映画「風立ちぬ」でも大気安静療法を行っているシーンがありました。また、肺の空洞を潰すために肋骨を取って胸骨を変形させる外科的な治療もありました。
現在の治療方法は、結核の診断がおりて最初の2か月は4種類の薬を投与します。(あくまでも標準治療で、状態によって変更あり)それを60日以上飲みきったら、次に2種類の薬を4か月(状態によりプラス3か月)投与する流れとなります。きちんと服薬していればほとんど治ります。なぜ複数の薬を投与するかというと、菌によって耐性がある薬が異なるためです。

最後に伊藤医師から「結核は思っているよりも身近な病気です。空気感染する病気で、日本人は高齢者、外国人は若者に罹患者が多いです。ただ薬をしっかり飲めば、基本的には治る病気でもあります。結核菌はいつ誰が持っているかわからないですが、とにかく発症させないためにも、健康な免疫状態を維持する必要があります。バランスの良い食事・適度な運動・しっかりと睡眠を行うことや、なによりも毎年健診を受診して早期発見を行うことが大事です。」と呼び掛けて第1部は終了しました。

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第2部では、杉浦主任看護師が当院の紹介や救急外来の現状についての講演を行いました。当院の救急外来に関連する役割は様々ありますが、主に救急告示病院(二次救急)として患者の受入れを行っています。
・救急告示病院・・・以下の4つの条件を満たしている病院
① 救急医療についての知識・経験のある医師が常時診療に従事している
② 救急医療を行うために必要な施設・設備がある
③ 救急隊の搬送が容易な場所に病院がある
④ 専用の病床または優先的に使用される病床がある

救急告示病院は、重症度に応じて3段階に分かれています。当院は入院や手術が必要な重症患者の対応をする二次救急を担っており、24時間365日救急患者の受け入れを行っています。救急搬送のおよそ8割が二次救急医療機関への搬送であり、救急のメインは二次救急とも言われています。

次に救急外来利用時の流れについて説明がありました。まず救急搬送の流れです。
① 救急隊からの電話連絡(ホットライン)
② 救急外来フロアで緊急処置の準備を整える
③ チームで搬入口に患者を迎えに行く
④ フロアへの移動中、重症度判定(トリアージ)をする
⑤ 救急隊から医師へ申し送り
⑥ 医師の指示のもと検査・治療開始
また、救急患者対応以外では、より良い医療・看護が提供できるように、共有したい事項についてスタッフで話し合うカンファレンスを行う他、医療物品の管理(在庫・日切れのチェックなど)を行っています。

続いて救急外来受診の流れです。
① 受付後、「問診用紙」の記入
② 内科系・外科系いずれかに振り分け
③ 看護師による問診(トリアージ)
④ 順番に呼び出し
看護師による問診では、患者さんの容態や緊急性を確認し、診療や処理の優先順位を決めています。緊急性の高い患者さんが優先されるため、診察の順番が前後する可能性があります。
救急外来を受診する際は、保険証(マイナンバーカード)、診察券、お薬手帳、こども医療費受給者証(母子手帳)、現金もしくはクレジットカード、ペースメーカー手帳、MRIカードを忘れずに持参ください。また、救急外来利用時に、ご家族には救急車への同乗、病歴の共有、アレルギーの有無や体重の把握を行っていただくことをお願いしています。

受診時の患者さんからの要望のなかで、救急外来ではできないこともあります。まず診断書の作成は、専門医が診察しないケースが多いため不可能です。交通事故などでの受診では、時間の経過とともに症状に変化が見られることもあり、後日専門医に作成をしてもらうようにお願いしています。また、診察は内科系・外科系医師が交代で行うため、医師を選ぶことはできません。検査・治療の希望や、薬の長期処方についても難しく、希望に添えないことが多いです。

救急外来では様々な統計を取っていますが、その一つの応需率(救急車受入要請のうち受入れできた台数の割合)は99.09%(2024年度)です。地域医療に貢献するという当院の方針から、文字通り断らない医療を実践しています。当院では島田市以外にも、焼津市・藤枝市・吉田町や、浜松市までの西部地域からの搬送を受け入れています。他の病院で受け入れを10回以上拒否された患者さんなども、ほとんど受け入れをしています。

救急外来を受診後、約30%は入院、約70%は帰宅となりますが、帰宅者全員が元気で帰れるわけではなく、入院を適応としないだけで通院や自宅での経過観察が必要となる方もいます。その中で、高齢者だけで暮らしていて、帰宅後の生活や健康管理が困難になる方も増えています。帰宅者が安心して生活できるように、市や福祉へどう繋いでいくかを検討することが今後の課題となっています。

救急外来の目的は、診療時間外に緊急性の高い患者さんの診察・治療を行うことです。
まずはかかりつけ医を見つけて、早めに受診することで重症化を防げます。かかりつけ医を持つことで、以下のことに繋がります。
・日常の健康管理のアドバイスがもらえる
・体調の変化に気づいてもらえる
・専門医療機関への紹介
・専門医療機関での待ち時間減

日本は今、「医療」から「生活」を支援することに重点を置くようになっており、必要なときだけ入院をし、地域での暮らしを基盤とする形に移行しています。
そのために、地域包括ケアシステムや地域包括支援センターの利用を勧めています。
・地域包括ケアシステム・・・老化や病気でも、住み慣れた地域で安心して最期まで暮らせるように、自治体・医療従事者・介護従事者・住民らが力を合わせて、一体的にサポートするしくみ
・地域包括支援センター・・・地域で暮らす高齢者を支える拠点として、介護や健康についての相談を受けてくれる施設
また、地域包括ケアセンターへの相談などにより、救急車の適正利用にも繋がります。救急医療を本当に必要としている人のために、救急車の適正利用への協力を呼び掛けて第2部は終了しました。

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文責:経営企画課

 

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