2025年6月21日(土)に島田市立初倉公民館「くらら」で医療学習会が開催され、当医療センター消化器内科部長の石橋医師、島田消防署の池谷救急救命士が講演を行いました。
第1部では、石橋医師が食道・胃・大腸がんについての講演を行いました。
日本人のがん発生状況は、平均寿命が延びるとともに増えています。生涯でがんに罹患する確率は男性で65.5%、女性で51.2%となり、いずれも二人に一人はがんにかかるということがわかります。部位別に見ると、男性は前立腺がん、女性は乳がんと性別特有のがんにかかることも多いですが、消化器がん、特に食道・胃・大腸がんは非常に罹患率が高くなっています。
まず食道がんについてです。罹患率は男性2%、女性0.4%、死亡率は男性1%、女性0.2%です。初期症状では胸がしみたり、食べ物を食べたあとにチクチク痛んだりします。がんが大きくなると、食道が狭くなり食べ物の通過が困難になります。さらにがんが大きくなると、食道全体を塞いでしまうことで水分や唾液も飲み込めなくなり、戻すようになります。そうすると栄養不足・体重減少に繋がります。がんが食道壁を突き破って広がることで胸や背中の痛みが起き、反回神経へ浸潤すると声がかれる(嗄声)症状が起こることもあります。危険因子は、喫煙・飲酒が主なものとなっています。飲酒するとすぐに顔が赤くなる体質の人は、アルコールを摂取するほど発がん性が高まります。
続いて胃がんについてです。罹患率は男性10%、女性4.8%で、死亡率は男性0.3%、女性0.1%です。早期段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がないということも多々見受けられます。症状として、痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振があります。これらの症状は胃がん特有のものではないため、胃炎や胃潰瘍を疑われ、内視鏡検査を受けたときに胃がんが発覚することもあります。危険因子は塩分過多、喫煙、飲酒、ピロリ菌感染などがあります。1日の目標塩分摂取量は男性7.5g、女性6.5gですが、日本人の現状は男性11g、女性9.3gと上回っています。飲酒量については多いほど胃がんになりやすく、エタノール摂取量が23g以上で胃がんのリスクが高まります。エタノール摂取量23gというのは、日本酒1合分やビール500ml缶1本分にあたります。ピロリ菌については、感染歴のある人は未感染者の150倍胃がんになりやすく、除菌療法で胃がんのリスクが低下したあとでも未感染者への50倍ほど胃がんのリスクがあります。早期発見できれば内視鏡治療が可能であるため、定期的な胃カメラ検査が重要です。
続いて大腸がんについてです。罹患率は男性10%、女性8.3%です。早期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると血便や下血などの症状が起こります。がんが進行すると出血を繰り返し、貧血を引き起こすこともあります。便に血が混じる、血が付着する症状は痔などでも見られるため放置してしまいがちですが、症状があれば早めに消化器科を受診することが大切です。危険因子については、運動不足、野菜・果物摂取不足、肥満、飲酒があります。また、大腸がんの家族歴がある人はリスクが高くなります。
それぞれのがんの治療は、内視鏡治療、外科的手術、放射線治療、化学療法などをステージに応じて行います。消化器内科で行う内視鏡治療の様子を、実際の映像を見ながら具体的に説明を行いました。最後に、消化器症状でお困りのことがあれば、いつでも消化器内科へお越しくださいと呼びかけて第1部は終了しました。
第2部では、池谷救急救命士が救急車利用実態についての講演を行いました。
救急出動件数は、減少している住民人口とは反対に年々増加しています。平成28年度から静岡市、島田市、牧之原市、吉田町、川根本町で消防広域化された静岡市消防局管内では、令和5年の件数が4万8,000件弱と、5万件目前の状況となりました。令和2年度以降、コロナ渦により件数は減少していましたが、令和5年5月に新型コロナウイルス感染症(COVID19)が5類に移行してからは増加しています。初倉救急隊の出動件数も右肩上がりで、令和5年には約600件となりました。また、初倉管内で発生した件数も増加しています。搬送者を年齢別に見ると現在約65%を高齢者が占めていて、少子高齢化により今後高齢者の割合がさらに増えていくことが予想されます。
救急車要請時に救急隊から行われる質問について説明がありました。
・傷病者の名前、住所、生年月日など
・救急車を呼ぶに至った経緯(いつ・どこで・誰が・どのように)
・普段の生活状態(歩行状態、食事の介助有無など)
・利用している介護施設
・最終食事時間
・薬のアレルギー有無
・既往歴(過去・現在の病気、服用薬、手術歴) など
救急隊はありのままを病院に伝えるため、わからないときはわからないと正直に伝え、うやむやな回答は行わないことが必要です。また、救急車を要請されれば救急隊は必ず処置を行うため、心肺停止になったときにどうしてほしいか、あらかじめ家族で話し合っておくことが大切になってきます。
静岡県が提供している2つの電話相談窓口の紹介がありました。
・救急安心電話相談窓口(#7119) 15歳以上が対象
・静岡こども救急電話相談(#8000) 15歳未満が対象
どちらも24時間対応で、けがや病気で救急車を呼ぶかどうか迷ったときに、対応方法などを相談することができます。
最後に、実際にあった不適切な救急要請事例を紹介しながら、救急車の適正利用をすることを呼びかけて第2部は終了しました。
文責:経営企画課