2025年10月18日(土)、大津農村環境改善センター 山王にて医療学習会が開催されました。当日は当医療センター循環器内科主任部長の金森医師と、島田市包括ケア推進課の大庭課長補佐による講演が行われました。
第1部:「心臓病について」- 金森医師(当医療センター循環器内科主任部長)
第1部では、金森医師が「心臓病について」をテーマに循環器疾患全般について解説しました。
心臓病とは、心臓の構造や機能の異常による疾患のことで、具体的には以下のような病気が挙げられます。
- 心不全
- 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
- 心臓弁膜症
- 不整脈(心房細動を含む)
- 心筋症
- 先天性心疾患 など
当院の循環器内科では、入院患者の主な疾患は「虚血性心疾患」「不整脈」「心不全」の三つであり、それぞれの概要および予防策について以下のように解説がありました。
1. 虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)
虚血性心疾患は、冠動脈の動脈硬化や血栓が原因で血流が遮断される疾患です。具体的には以下のような症状が起こります。
- 心筋梗塞:冠動脈の閉塞により、心筋が壊死する状態。
- 狭心症:冠動脈が一時的に狭くなり、胸部の痛みなどの症状が発生する状態。
特に心筋梗塞については、早急な治療が重要であり、当院では発症から60分以内に治療が行える体制を整備しています。発症者の約半数は発作の前兆として以下の症状があります。
- 胸の圧迫感や胸やけ
- 腕・肩・歯・顎の痛み
症状が繰り返し発生し、長時間続く場合には注意が必要です。早期受診が推奨されます。
2. 不整脈
不整脈は心拍のリズムが乱れる疾患で、代表的な症状に「心房細動」があります。心房細動では心房が震えることで脈拍が不規則になり、血液の流れが滞り血栓が形成されやすくなることが特徴です。この血栓が大動脈を通じて脳に到達すると、脳梗塞を引き起こす可能性があります。
予防として、以下の実施をすすめています。
- 手首の橈骨(とうこつ)動脈での簡易検脈
- 血圧計で検脈できる機能の利用
3. 心不全
心不全は、心臓の機能低下により息切れやむくみなどの症状を引き起こし、命に関わる疾患です。
現在、日本国内では年間推計約120万人が心不全と診断されており、退院後1年以内の再入院率は26%、また1年死亡率は23%と、がんと同程度の重大な疾患となっています。
心不全は悪化を繰り返すことが多いため、以下の予防策が重要です。
- 適切な血圧管理
- 肥満の改善
- 糖尿病や脂質異常症の治療
- 健診の指摘を受けた際の早期受診
- 適度な運動、禁煙、多量飲酒の回避
講演は、循環器疾患の予防により健康寿命の延伸を目指す意義を伝え、終了しました。
第2部:「地域包括ケアシステム」- 大庭課長補佐(島田市包括ケア推進課)
第2部では、大庭課長補佐が「地域包括ケアシステム」について講演しました。
地域包括ケアシステムとは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的かつ継続的に提供するネットワークの構築を目指す制度です。具体的には以下の活動が進められています。
1. 地域包括ケアシステムの背景と重要性
背景として、日本では以下の社会課題が発生しています。
- 人口減少と少子高齢化
- 一人暮らしの高齢者の増加
- 認知症高齢者の増加
これらに対処するため、これまでの「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換を推進しています。
2. 島田市における取り組み
島田市では、中学校区ごとに6つの地域包括支援センター(愛称:高齢者あんしんセンター)を設置しています。これにより、高齢者が地域で安心して生活を続けるための窓口機能を提供しています。
また、個人の自助努力を促進するため、ACP(人生会議)の普及も進めています。ACPでは以下の内容について本人・家族・医療介護関係者が話し合います。
- 将来の医療・ケアについての意思決定
- 自分らしい生活をどう実現するか
島田市ではこの普及活動として「もしもの安心ノート」や「リビング・ウイル島田版」を配布し、相談支援の環境を強化しています。
講演は、可能な限り住み慣れた地域で、笑顔で自分らしい暮らしを継続できる、包容力のあるまちの実現を目指していきたいと伝え終了しました。
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金森医師
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大庭課長補佐
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参加者の様子
文責:経営企画課


