2026年5月16日(土)に島田市立金谷公民館「みんくる」で医療学習会が開催され、当医療センター脳神経外科医員の成井医師と、島田消防署金谷出張所の川上救急救命士が講演を行いました。
第1部:「脳卒中について」-成井医師(当医療センター脳神経外科医員)
静岡県は健康寿命が全国第1位です。死亡の原因も老衰が多く、心臓病やがん、肺炎は全国平均より少ないですが、脳血管疾患は全国平均より多くなっています。そのため、脳の疾患について知り、備えておくことが大切です。
脳卒中の「卒中」とは突然起こるという意味で、脳卒中は血管の障害によって突然意識を失ったり、手足の麻痺を発症する病気の総称を指します。脳細胞は再生しない組織のため、一度発症すると多くの人は後遺症が残ります。脳神経外科で行う手術は、脳組織の損傷を最小限に抑えてできるだけ早くリハビリに集中できるようにするために行っています。
脳の血管の障害は大きく分けて2つのパターンがあります。
- 血管が詰まる(脳梗塞)
- 血管が破れる(脳出血、くも膜下出血)
脳卒中になると、手足の麻痺、高次機能障害(言葉の障害、空間認知や読み書き、道具の使用等が困難になる)の症状が起こります。
1.脳梗塞
脳の太い血管に血栓ができ、栄養や酸素が行き渡らなくなることで、脳細胞が壊死していきます。
【治療】
- 溶かす治療(血栓溶解療法)
点滴で血栓を溶かす薬剤を投与します。太い血管が詰まった場合は効果が不十分で、この治療だけで完全に良くなる可能性は低いです。発症から4時間半以内でしか行えない治療です。
- 取り除く治療(血栓回収療法)
カテーテルを使用した手術です。血管内にカテーテルを進め、血栓の近くでステントという金属の器具を広げることで血栓を絡めとり、体の外に出します。太い血管の脳梗塞でも再開通率が高く、治療を受けた50%弱の人が歩けるようになったというデータもあります。脳梗塞が完成するまでの発症から約24時間以内に行うことができる治療です。
2.脳出血
脳の細い血管が破れて出血が起き、脳細胞が壊れたり、脳のまわりの部分が圧迫されることで起こります。
【治療】
脳出血で破れた脳を元通りにすることはできませんが、手術で血腫を取り除き、出血点の止血を行って、できるだけ早くリハビリを始められるようにしています。
3.くも膜下出血
動脈にもともと出来ていた瘤が破裂し、くも膜下腔に出血が広がることで起こります。30%が発症時に亡くなり、30%が寝たきりとなり、40%が社会復帰となりますが、社会復帰となる人も後遺症が残ることが多いです。瘤があることによる症状はないため、瘤が破裂して初めて気が付く怖い病気です。
【治療】
- クリッピング術
瘤の根元をクリップで挟み、瘤の中に血液が入らないようにすることで、破裂・再破裂を防ぎます。
- コイル塞栓術
カテーテルを入れ、コイルを瘤の中に巻いて血液が入らないようにすることで、再破裂を防ぎます。
また、破裂予防の最新治療となるカテーテル手術の紹介がありました。
フローダイバーター治療法・・・瘤には直接触らず、血管にステントをおくことで、瘤に血液が流れなくなり徐々に小さくなる治療法です。この治療法は、ここ2~3年で実施できる施設が広がってきていますが、現時点で実施できる医療機関はまだ少ないです。
脳卒中は治療に時間制限があるため、発症したら自宅で様子を見るのではなく、すぐに受診をすることが大切です。FAST(顔(Face)の麻痺、腕(Arm)の麻痺、言葉(Speech)の障害、発症時刻(Time))に注意することが重要な鍵となります。
※参考:「脳卒中から大切な人を守る合言葉「FAST」(ファスト)」
最後に、当医療センターの取り組みの紹介がありました。
- 脳卒中ホットライン
救急隊や開業医、総合病院から当医療センター脳神経外科に直接患者さんが紹介される仕組みを作り、受診までの時間を短縮しています。
- 脳ドック
当医療センターでは検査結果を脳神経外科医が必ずチェックして、問題があれば外来に案内しアフターフォローするようにしています。
第2部:「救急車利用実態について」-川上救急救命士(島田消防署金谷出張所)
1.救急車の出動実績
令和7年救急出動件数(静岡市消防局管内)は49,898件
その内、島田市は約9%、4,571件
金谷救急隊の出動件数は年間約1,000件
1月、12月が100件超えと多く、あとの月はおおよそ70~80件ほどで横ばい
2.救急車の出動種別
急病7割
交通事故1割
一般負傷(転倒、転落等)1割
転院搬送(開業医→総合病院、総合病院→総合病院等)1割
その他、火災による火傷や暴力事案、運動競技中の事故等での出動をしています。
3.119番通報の仕方
病気や怪我で119番通報を行うと消防局指令課に繋がります。通報は難しく感じますが、指令課の職員の質問に答えていけば、必要な情報が伝えられるようになっています。
・火事か救急か?
・住所はどこか? など
スマートフォン、固定電話問わずGPSで追跡可能なので、正確な住所がわからなくても周辺の建物等で確認をします。
指令課で緊急車両を手配した後、患者さんの状態(意識の有無、怪我の状態、持病の有無等)を確認します。これらは救急隊に無線で共有され、救急隊は現場に到着後すぐに対応できるように準備をしながら向かいます。
4.119番通報したら準備すること
- 身分証(マイナンバーカード)
- お薬手帳
ご家族に患者さんの生年月日等を聞くこともありますが、現物があると情報が正確に伝わります。普段から家族など大切な方の身分証、お薬手帳がどこにあるかを把握しておくことが大切です。お薬手帳が新しいと履歴があまり残っていないこともあるため、古いお薬手帳も準備できると良いです。
救急車が到着したら、救急隊から患者さんについて以下のことを質問されます。
・名前、生年月日、住所
・救急車を要請した経緯
・普段の様子(意思疎通が可能か、車いすや杖を使用しているか、介護認定を受けているか等)
・過去の病歴、アレルギーの有無
・その他(最後に普段通りだったのはいつか、最後に食事をとったのはいつか、キーパーソンは誰か、連絡先等)
5.その他
映像通報システム「Live119」
迅速な現場活動に活用するため、通報者のスマートフォンのカメラを使用して、実際の事故現場や病気の状態を映像として送ることができるシステムです。指令課の職員はその映像を見て、必要な部隊の増員や救急隊に必要な情報を伝えています。複数の車両事故や、通報者本人が遭難した場合等に活用されています。
【使用手順】
指令課の職員から通報者に協力依頼があり、賛同した場合は以下の手順を行います。
- 電話をスピーカーにする。
- 指令課から受け取ったショートメッセージのURLをクリックする。
- マイク、カメラ、位置情報の使用許可をする。
- カメラで撮影した映像が指令課に転送される。
119番通報をするか迷ったときの相談機関
救急安心電話相談窓口(#7119)、静岡こども救急電話相談(#8000)
走行中の救急車からのお知らせ
救急車はスピードが遅いと感じることもあるかもしれませんが、できるだけ患者さんの負担にならないように、様々なことを考えながら走行しているためです。
後ろから救急車が来た場合、車両移動の指示があるため焦らずに指示に従うことが大切です。基本的には道路の左側に寄って道路の真ん中を空けます。交差点では一時停止や徐行をするため、救急車が「遅くなった」「止まった」と思っても交差点に侵入しないようにしましょう。
-
成井医師
-
川上救急救命士
文責:経営企画課


