治療の必要性、目的
前立腺肥大とは男性の老化現象の一種であり、かならずしも症状がでるとは限りません。尿道を圧迫して排尿障害、頻尿などの症状が出てきた場合には治療の対象となります。まず内服治療をおこないますが、薬だけでは充分な効果が得られない場合、尿が全く出せなくなったり(尿閉)、残尿が多くて腎臓に負担がかかる場合には手術の対象となります。手術をすることにより尿が勢いよく出るようになりますし、残尿が減り夜間トイレに起きる回数も減ります。また、大半の症例で内服薬が不要となります。
治療の実際
現在最も一般的に行われている手術は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)です。尿道から内視鏡を入れ水を流しながらビデオカメラで見て肥大した前立腺を削っていく方法です。開腹手術と違い、体の表面には傷がつかず手術後の回復が早いことが特徴です。
下半身麻酔(腰椎麻酔)で約1~2時間の手術です。手術の翌日より歩行、食事が可能です。尿を流すために尿道に入れておいた管は、術後3~4日目に抜き、術後約1週間で退院が可能です。
治療の合併症
1.出血
- 手術中、手術後の出血が多ければ輸血をする場合もありますが、きわめて稀です。
- 血の塊りが尿道を塞いで尿が出にくくなり一時的に尿道に管を再挿入する場合もあります。
- 手術後10日目前後に出血が強くなる場合もあります(後出血)。りきむと起こりやすいので便秘などに注意して下さい。
2.穿孔
前立腺を深く削ると、前立腺の被膜に穴が開いてしまうことがあります。
3.尿失禁
きわめて稀ですが、尿道括約筋が損傷されたときに起こることがあります。
4.尿道狭窄
手術後1~2ヶ月頃に尿道が狭くなり、拡張が必要となることがあります。(2~3%)
5.逆行性射精
勃起機能に障害は残りませんが、射精した精液が尿道から出ずに膀胱内に逆流することがあります。
文責:泌尿器科