
漫画・ドラマ「フラジャイル」や仲野徹著「こわいもの知らずの病理学講義」、病理医ヤンデル(@Dr_yandel)|Twitter 等で徐々に認知されはじめていますが、当科は病院の「診療部門」の一つで、病理専門医は、細胞検査や診断用顕微鏡標本の作製などを業務とする臨床検査技師と共に病理診断業務を行っています。
診断や治療といった医療行為のために、胃、大腸、肺などの内部を観察する内視鏡検査や手術によって肝臓・甲状腺・脾臓などの組織や臓器を摘出することがあります。また、痰や尿、体の中に異常に貯まった水分(腔水)、甲状腺・乳腺・リンパ節などを穿刺吸引し採取された細胞を検査することもあります。これらの採取された組織、臓器や細胞を主に光学顕微鏡で観察し、病気を診断するのが病理診断科です。
当科では、当院で採取された検体以外にも、紹介患者標本についても確認診断を行っております。
病理診断について
適切な治療のためには、病気を正しく診断することが前提です。正しく診断するために、主治医は血液検査や放射線画像検査などのいろいろな検査を行います。それらの検査の中に病変部の組織や細胞を採取する検査があり、採取された組織や細胞を顕微鏡で観察して病気を診断するのが病理検査です。つまり、組織や細胞の形態から病気を判断するのが病理診断です。
病理組織標本は固定(人から離れた細胞、組織は徐々に壊れてしまうので、それを防ぐためにホルマリンあるいはエタノールという固定液に入れます)、包埋(薄く切るために、パラフィンとよばれるロウの中に入れて固めます)、薄切[ガラスの上に貼り付けるために3~4マイクロメーター(1000分の1ミリメーター)程度に薄く切ります]、染色(細胞に色をつけて見やすくします)という過程を経て作られます。通常、内視鏡などで採られた小さな組織は1、2日で、手術で切除された胃などの大きな組織は1週間程度で標本となり診断されます。
顕微鏡によって詳しく観察すれば、その組織・細胞の性格は十分判断出来ます。
しかし、中には判断の難しい症例もあります。この場合は通常の染色に加えて、免疫組織化学染色、電子顕微鏡による検鏡などの検索も追加し、さらに日本病理学会や国立がんセンターCIS病理診断コンサルテーション・サービスを利用して他の病理専門医のセカンドオピニオンを得ることによって正しい診断に至るべく努力しています。
また、手術中に切除した臓器の辺縁部に癌が及んでいるか否か、リンパ節などの他の部位へ癌が転移していないかなどを、凍結標本を作ることによって手術中に迅速に診断し、通常10~15分程で手術室へ診断結果を報告します。この病理診断科の迅速診断によって、執刀医は安心して手術を進めることができます。迅速診断の結果によって適切な手術手技が決定されます。
手術で摘出された臓器も病理診断科で検査されます。術前の臨床診断を病理形態的に再確認すると共に、悪いところが完全に取られており、取り残しがないかどうか、リンパ節に転移がないかどうかなども病理診断医が調べます。手術材料の病理診断が出て、初めてその後の治療計画が策定可能になるといっても過言でありません。
残念ながら治療の効なく不幸にして患者さんが亡くなられた場合には、主治医が病理解剖(剖検) の許可をお願いすることがあります。剖検も病理診断科の大切な仕事です。剖検とは、「どうしてこういう症状がでたのか?」とか、「どうして患者さんは亡くならねばならなかったのか?」とか、「治療効果は十分あったのか、治療法は正しかったのか?」などの疑問に対して、病理形態学的解析によって回答することです。どんなに画像診断や特殊な診断技術が向上しても、実際に身体を隅々まで調べることは出来ません。剖検によって初めて確かめられる事実はまだまだ多くあります。もちろん剖検したからといって亡くなられた患者は戻らないのですが、剖検によって明らかになった事実が主治医の貴重な経験となり、よりよい医療に結び付きます。つまり、剖検はその病院の医療の質を保証する大変重要な業務なのです。
当院病理診断科には、常勤の病理診断医1名、非常勤病理医師4名と、臨床検査技師6名(うち細胞検査士3名)が所属し、皆様の適切な治療のために病理診断を行っています。
医師紹介
職名 | 氏名 | 医師免取得年 | 学会専門医資格等 | 備考 |
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部長 | 橘 充弘 | 1999 | 日本病理学会/日本専門医機構認定病理専門医・研修指導医 日本臨床細胞学会認定細胞診専門医・指導医 日本病理学会評議員 死体解剖資格 医学博士 |
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非常勤 | 濱保 英樹 | 2007 | 日本病理学会/日本専門医機構認定病理専門医 死体解剖資格 産業医選任資格 日本小児科学会認定小児科専門医 |
京都大学大学院医学研究科法医学講座 大学院生 |
非常勤 | 小杉 伊三夫 | 1985 | 日本病理学会/日本専門医機構認定病理専門医 死体解剖資格 医学博士 |
浜松医科大学 再生・感染病理学講座 准教授 |
非常勤 | 三浦 克敏 | 1980 | 日本病理学会/日本専門医機構認定病理専門医 日本臨床細胞学会認定細胞診専門医 死体解剖資格 医学博士 |
浜松医科大学 基礎看護学(健康科学) 講座 教授 |
顧問 |
堤 寛 | 1976 |
日本病理学会/日本専門医機構認定病理専門医 |
前・藤田保健衛生大学第一病理学講座教授 つつみ病理診断科クリニック院長 |
統計
■病理統計
業績
研究の情報公開文書
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病理診断にもとづくランゲルハンス細胞組織球症(LCH)の疫学研究(PDF 186KB)
lgGFc結合蛋白に関する臨床病理学的解析 (PDF 161KB)
固形腫瘍における遺伝子異常の網羅的解析 (PDF 154KB)
正常の皮膚・粘膜におけるメルケル細胞の分布の組織学的検討 (PDF 157KB)
文責:病理診断科